メルマガ40号 AV違約金訴訟で原告(プロダクション)敗訴 判決の意義(その2)


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●●ポルノ被害と女性・子どもの人権プロジェクト メールマガジン
                 vol.040 2015年12月23日 発行

【ポルノ被害と性暴力を考える会】

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≪ AV違約金訴訟で原告(プロダクション)敗訴 判決の意義(その2) ≫

あるプロダクションがAV出演を断った女性を相手取って損害賠償請求の民事訴訟を起こした。プロダクションの請求は棄却された。AV制作に巻き込まれ、制作現場では女性が性搾取され、性被害が横行していた問題が民事的な司法の場で公になった意義について、さらに検討を加えてみよう。
女性側は訴えられたのでやむなく受けて立たざるを得なかった裁判であるが、判決と審理プロセスの意義について以下のことも評価できると思われる。

1 AV制作現場で行われているあこぎな性搾取や性暴力が可視化されたこと
9本のAV出演を断ったら、プロダクションはその女性に対してまだ撮影してもいないDVDの損害を請求してきた。1本当たり約二百数十万円、計2400万円もの損害金の額について、二十歳やそこらの女性にそんな高額な価値があるということで、一般的には単純にびっくりしたと思う。そんなに価値があるとすれば、契約させた以上プロダクション側には性暴力行為と言われようと強行するインセンティヴが働くということを、裁判は理解しやすい形で示した。女性は納得して出演しているし、対価も得ているのだからAVには被害者はいない、という神話の一端が事実を持って崩された。

2 AVに絡めて取られた女性を縛っている“契約”について、判決はその外形的な形式ではなく実態的な内容に即して判断を下していること
 AVに絡め取られた女性は途中で“もう(出演は)嫌!”と思っても、契約しているのだから出演しないのなら、違約金を支払えと、とんでもない額の違約金の請求がされる。AV出演の実態を知った女性が抜けだそうにも抜け出せない装置の要にあるのが、女性、プロダクション、メーカーとの間で交わされる種々の契約書なのだ。契約書として形式は整っているかもしれないが、その内容は極めて不平等で、プロダクションと制作会社との実態的な力関係において女性は事実上無権利状態に置かれてしまう。これに関しては、PAPSでは何種類かの契約書を実際に入手して内容を読み込んでおり、かねてから問題視していた。
当該女性が取り交わした契約書は、自分の女優活動の営業をプロダクションに委任する形式を取っている。しかし、実態はプロダクションが受けてきた業務を女性が否応なく受けざるを得ない雇用契約に近い内容だと判決では判断した。雇用類似の契約であるなら、民法上はやむを得ない事情にある場合は契約を破棄できるとの条文(民法628条)がある。やむを得ない事情というのが、メルマガ39号で伝えた「意に反した性行為はしなくてもいい」という判断である。
 AV制作に絡め取られている女性が抜け出したくとも抜け出せないでいる要の契約書が果たす役割は極めて重大だ。PAPSでは、弁護士などに相談に行くと契約書を取り交わしている以上仕方ないねと受任してもらえない例を聞いている。形式ではなくその契約の実態や機能が問題だという判決の意義は極めて大きい。

3 プロダクション(原告)は女性(被告)に法廷での証言を求めたが、この請求を裁判所は退けていること
この裁判では、被告にされた女性は証言台に立つことになく審理が進行し結審にまで至っている。このことは、性暴力裁判としてとらえたとき極めて大きい意義がある。女性はプロダクション側から訴えられたのでやむなく受けて立たざるを得なくなったのだが、逆にAV産業側からいえば、出演拒否なんかすればこういうことになるのだぞという、ある種の見せしめ的な意味を持っていたと思われる。性暴力被害の裁判における当事者が出廷せざるを得ないとき、遮蔽措置が施される場合があるが、それでも法廷に立たねばならないこと自体の恐怖は想像に難くない。裁判所が、女性が証言台に立たなくても審理はすすめられるとの判断を示したことによって、女性はどんなにか安堵したことだろうか。この事案を一般化するわけにはいかないが、少なくとも原告であるプロダクションは、このことを理由に控訴していない事実を残したと思う。

4 被告である女性からの訴訟記録の閲覧制限の請求が認められていること
 一般的に裁判は公開が原則である。しかし、性被害の裁判においては女性の二次被害を防ぎ、プライバシーを守るためには、裁判はもとより裁判資料を公開しない原則が必要だ。この裁判においては、女性側弁護団は訴訟記録閲覧制限の手続きを取り、認められた。第1審判決が確定した後、PAPSを含めて女性側の弁護団は記者会見を開催した。この時の公開資料は、全て女性が確認をし、了承した資料のみである。

この裁判を通じて、当事者の女性が男性との性行為を撮影されることを拒否したら、契約書を盾に莫大な違約金や損害賠償を請求するAV業界の“慣行”の理不尽さが明らかにされた。AVの制作過程には、性搾取的な性暴力が存在していることが分かったのである。
プロダクションの損害賠償請求は棄却されたが、女性にとってはこれで問題が解決したわけではない。第1審の確定以後も、DVDの映像はネットに氾濫しているのだ。類似したひどい例では、2004年にバッキービジュアルプラニングというAV制作会社の関係者が、強姦致傷罪で立件され主犯格は懲役18年の重罪に処された事件があった。AV制作の犯人らは収監されたが、その“作品”はいまだに堂々と販売されているし、映像もネット上に氾濫している。
前号のメルマガの繰り返しになるが、判決確定後の課題は、意に反して撮影されたAVの販売差止め、回収命令を容易にすること、被害者からの損害賠償請求をでき易くすることなどがある。
この問題に関しては30年以上も前に既にアメリカで論じられた例がある。次号のメルマガでは、以前にアメリカで論じられた「反ポルノグラフィ人権条例」の論点をもう一度振り返ってみよう。
 
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