メルマガ38号 研修会「どう守るか 性の商品化と若年女性の被害」の報告


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●●ポルノ被害と女性・子どもの人権プロジェクト メールマガジン
                 vol.038 2015年11月22日 発行

【ポルノ被害と性暴力を考える会】
http://paps-jp.org
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2015年11月11日(水)(14:00~16:00)に、男女共同参画センター横浜(フォーラム)にて、横浜・公開講座&支援者向け研修として、ポルノ被害と性暴力を守る会(PAPS)主催で、「どう守るか 性の商品化と若年女性の被害児童ポルノ~AV被害まで」を開催しました。

≪参加者の状況≫
 今年はさまざまな現場で支援に当たっている人たち向けに研修を構成し、ウィークディの昼間に開催しました。何らかの支援現場というか、ポルノ被害に関わりを持っていると思われる多方面、多分野の参加者でした。児童養護施設、婦人保護施設、福祉事務所、養護教諭、弁護士、市議会議員等です。複数のメディアからの取材参加者もおりました。

≪研修内容≫
第1部 PAPS世話人の宮本節子が「性の商品化とポルノ被害」というタイトルで約25分の話をしました。宮本の話は、ポルノ被害が他の性暴力被害と比べた場合、如何に特異であるかが中心でした。最後に実際に入手した女性が取り交わす“契約書”のサンプルの説明を簡単に行いました。ポルノ被害の特異性には5点あります。

1.強姦、DV、セクハラなど社会的に認識されている性犯罪、性暴力は、私的な通常の社会生活の中で発生していることに対して、ポルノによる被害は、性産業という社会経済活動の極めてシスティマテックな仕組みの中で発生していること

2.性器や性行為を見世物として扱う“商品”や“成果物(個人的使用)”を作製していること

3.産業であるので利潤を挙げる規模の需要を前提にしていること

4.素材にされた人は、女男、年齢の別なく人間としての尊厳が深刻に侵害もしくは破壊され、この侵害や破壊の痕跡は半永久的に残り続け、他者の目にさらされるづけること。加えて、製品の素材にされた人の尊厳の回復は非常に困難な実態にあること

5.ポルノ被害は一つの製品をめぐって重層的に発生していること
 1次被害者は制作の過程で素材にされた人が被る、2次被害者は消費の過程で発生する、3次被害者はポルノ商品が社会に蔓延することによる社会環境そのものに与える被害として起こる

第2部 PAPSの相談員の金尻カズナが実際に相談にあたった事例をもとにして「児童ポルノ・AV出演の強要手口と現状」についてパワーポイントの図表を多数使用しながら具体的に語りました。金尻は90分にわたって相談者から聞き取った実際の手口や業者とのやり取りを生き生きと語りました。以下はそのごく一部です。

・相談の概況:2012年ごろからPAPSのメールにAV作製に巻き込まれて被害を被っている深刻な相談が寄せられるようになりました。その総数は、2015.9.28現在で、93件にのぼり、2015年は9月までで59件になり増加の一途の状況です。これまでの主な相談内容は、AV出演強要された(13件)、AV出演を辞めたければ巨額の違約金を払え(12件)、騙された(21件)、過去のAVを削除したい(20件)などです。

現在は、ポルノ被害者「相談支援事業」として、NPO法人人身取引被害者サポートセンター・ライトハウスとタイアップして行っています。

・私たちの日常生活に蔓延しているポルノ雑誌やポルノ情報についてパワーポイントで例示します。地下鉄丸ノ内線車内で大っぴらに広げて読まれているポルノ情報、コンビニエンスストアの店内の様子(ゾーイングなど全く体をなしません)、秋葉原のストリートで販売されている児童ポルノ、その中でも低年齢の女児の着エロもの(性行為を連想させるような姿態や性器を強調したもの)など、現在進行形の社会環境です。

・具体的な事例
○Aさんの場合(16歳):ネット上のジュニアアイドル募集ページから応募。カラオケ店の一室で面接、だんだんに露出度の高い水着に着替えさせられ、従順に応じる(この段階で断れない雰囲気がつくられてしまう)子かどうか選別される。撮影当日、撮影スタジオで初めて内容を知らされる。カメラマンと相手役の男に性行為を強要され、撮影が終わるまで帰してもらえない。プロダクションの人間は終始なだめ役として撮影がスムーズに行われるよう介入する。

この被害は、従順に応じた子が問題なのか、子どものネット使用を監視していなかった親の問題なのでしょうか。私たちが見落としているのは、このようにして製作される“商品”を買う側が常に免罪されている現状が問題ではないでしょうか。

○Sさん(15歳)の事例とその対応:義父から性的虐待を受け家庭は安全と安心を保証されていないので家出し、たまに家に戻る。繁華街などで買春者に出会い、性行為を求められる生活の繰り返し。避妊具なしの性行為も行われる。対価は、泊めてもらう、2000円ほどなど。児童相談所や児童養護施設には絶対に行きたくない。過去には、教育指導の先生、児童相談所などが関わっているが、差しのべられた手をつかむことができずに、周囲の大人からは孤立してしまった。今は、私たちの相談ラインと電話で繋がっている。 “今、援交してる”などの実況ライン、“リストカットした”とその写真、“今から(ホーム)に飛び込む”など、内容は極めて重たい。しかし、私たちの対応は、決して責めたりお説教したりしないでひたすら聴くことに徹し、細く繋がった糸が切れないようにしています。

○以上は児童の例ですが、大人の例ももちろん沢山あります。事例は割愛しますが、少しでも金銭の授受が発生すればどんな壮絶な被害を受けても、加害者は免罪されてしまうのでしょうか。AVプロダクションやAV製作会社が行っていることは、女性に対して労働者派遣法や職業安定法上の「公衆道徳上の有害危険業務」を強いていることになり、判例あるのですが、実際にはこれらの法律はあまり機能していません。

○最後に、今、私たちにできることは何でしょうか。私たちの日常生活にあふれているAVには甚大な性被害が存在している、まずは、この実態を知ってほしい。実態を知ったら周りに知らせて欲しい。みんなが立ちあがれば必ず、ポルノ被害を傍観している今の社会は変わります。

研修会のレジュメは残部がありますので、ご希望の方はお申し出ください。お送りいたします。
AV出演強要裁判に関しては次号にてお伝えします。 

ポルノ被害と性暴力を考える会編の出版物
『森美術館問題と性暴力表現』(不磨書房2013.8)1,890円+送料
『証言 現代の性暴力とポルノ被害 ~研究と福祉の現場から』
 東京都社会福祉協議会2010.11)1、905+送料
パンフレット『今はまだ名前のない性被害があります』カンパ200円以上+送料 

書籍の申し込みは住所・氏名・希望部数を記載のうえ
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FAX(03-6304-2564)までご連絡ください。

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