メルマガ22号 児童ポルノ禁止法改正で単純所持の一日も早い処罰化を


●●ポルノ被害と女性・子どもの人権プロジェクト メールマガジン
                 vol.027 2014年05月23日 発行
【ポルノ被害と性暴力を考える会】
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転載歓迎
≪児童買春・児童ポルノ禁止法改正で単純所持の一日も早い処罰化を≫

現在国会では、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護に関する法律(児童買春・児童ポルノ禁止法)」の改正に向けての審議が進行中です。今回の改正案の最大の論点は、児童ポルノの「単純所持の禁止(単純所持とは、製造や流通・販売・陳列などの目的ではなくて、自分が見るなどの目的で意図的に所持していることを指します)」の条項を新設したことです。いわゆる単純所持を禁止して児童ポルノへの需要を抑制しようとする対策の一環です。この改正案が一日も早く成立することを願います。

しかし、私たちは現行法制下で取り締まりがきちんとなされていない「着エロ」(ちゃくえろ)の問題が、改正案でも残されたままになってしまうことを危惧しています。「着エロ」とは、露出度の高い水着を着けた状態で、子ども(時には3,4歳と思われる幼い子どももいる)が、過激なポーズをとらされて撮影された写真集やビデオの事を指します。着衣しているというだけで、これらの製造・販売は児童ポルノの取締りの対象にはなっておらず、極めて一般的な大手のインターネットサイトでもこうした「着エロ」が広く販売されているのが実態です。こうした「着エロ」では、子どもたちは扇情的なポーズをとらされ、いわゆる性行為を連想させるような姿態のポーズを取らされたり、また性器の陰影を強調されて撮影されるなど、実質的な極めて性的な対象として児童を扱っている児童ポルノそのものです。

日本では、2004年に児童買春・児童ポルノ禁止法が改正されました。その時に、めまぐるしく進化するネットの技術革新から子どもたちの性的被害を防止する必要性があるために、3年を目処に法改正を検討する旨が附則に盛り込まれました。しかし、法改正をすることなくすでに10年もの年月が経過してしまいました。この間に、多くの子どもたち、とりわけ少女たちが児童ポルノ禁止法に抵触しつつも、取締りの対象とされていない「着エロ」の被写体にされ、被害に遭い続けています。これらの製造販売は増加の一途を辿り、深刻な被害が広がっています。多くの子どもたち、時にはとても幼い子どもたちが食い物にされています。

児童ポルノ禁止法改正に向けていくつかの論点を考えていきたいと思います。

1、今必要なのは、まずは児童ポルノの単純所持を禁じ、罰則化する、そのための一日も早い法改正を望みます。さらにそれのみならず、単純所持を禁じる法律をきちんと実効的に執行してゆく事を求めます。

まずは単純所持を禁じ、一日も早く罰則化する法律を成立させること、それが第一です。しかし、それだけでなく、どのようにそうした法律を実際に効果のあるものとしてゆくかが大切です。私たちが懸念するのは、せっかく単純所持が罰則化されても、それが全く運用されないという事態が起こり得るのではないか、という点についてです。技術的側面として、児童ポルノの破棄命令が出されたりや単純所持の罰則化が行われようとしても、デジタルデータであるがゆえに、暗号化された領域やクラウド上に保存して隠すことができてしまい、児童ポルノの所有を簡単に隠蔽できてしまうという問題があり、取り締まりの時に摘発しきれない恐れがあります。そのため、法律が有形無実化し、運用されなくなってしまうことを大変懸念いたします。まずは、単純所持の処罰化をすることが何よりも大切です。さらにそれのみならず、きちんと法律を運用し、児童ポルノを自己目的のために所持している事例を取り締まってゆくことがとても大切です。

児童ポルノには、実際に被写体にさせられた子どもの被害が存在します。自分が被写体とされた画像がある限り、死ぬまで怯えながら生活をすることを余儀なくされてしまい、画像が拡散してゆく限り、それを見続ける人がいるというだけで、被写体とさせられた子どもはくりかえし被害に遭い続けてしまうという被害の特質があります。従って児童ポルノを所持しているということは、被害児童への加害行為に加担しているのと同じです。現在OECD34カ国のうち単純所持を違法化していない国は日本だけです。たとえ莫大な量の児童ポルノを所有していても持っているだけでは罪に問われません。大人の都合で被害にあった子どもたちは放っておかれているのが現状なのです。

2「着エロ」の問題への厳正な対応を求めます。

現行法の第2条の児童ポルノの定義では、第3項の一・二号で定められたものの他に、三号で次のような規定があります。児童ポルノとは、児童の姿態を視覚により認識できる方法により描写したもので、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」という規定です。普通に考えれば、「着エロ」そのものの定義です。しかし、現実にはこの法律上の定義が「着エロ」に適用されることなく、機能していない現実があります。

実際に、出演を断わると違約金が発生すると脅され、「着エロ」の出演に余儀なくされた方の話によれば、警察に被害を訴えたくても訴えられないのが現状です。もし、被害を訴え出れば、注目を浴びてしまい、多くの人に見られてしまい、更に追い詰められてしまうことを恐れているのです。これまで実際に被害を訴えたことでメディア等によって面白おかしく扱われ、さらに被害が拡大してしまった事例を複数確認しています。

3.日本では漫画やアニメなどでの子どもを性的に描いた表現が全く法の枠外に置かれています。

児童ポルノをめぐって、日本で重要な争点になると予想されることはフィクションによる漫画やアニメの性表現に関しての論議です。現在日本では、これらの“非実在”のモチーフを扱った画像には被害者はいないとされ、法の枠外に置かれています。日本では漫画やアニメで子ども達への性行為を描いたもの、子どもが親や兄弟によって性的虐待されたりレイプされたり等の画像が氾濫しているにも関わらず、こうした表現をほとんど規制することもなく、ゾーニングも実質的にはない状態で放置しています。子どもに対する性行為に寛容な社会を生み出していく危険を放置しているのです。

4、所持そのものを禁止するのではなく、「所持に対する事前廃棄命令を設ける」ことで、冤罪が減るという主張があります。しかし、いつでも廃棄したソフトを復元できてしまう危険性があります。

破棄という概念は、児童ポルノが本やビデオテープやDVDで普及していた時代には有効であったと考えられますが、現在は、児童ポルノをBitTorrent等のファイル共有ソフトを使ってインターネット上で取得し、ハードディスクに保存することが行われる時代です。たとえファイルを削除したり、破棄したつもりでも、ファイル復元ソフトウエアを用いれば簡単に復旧させることが可能であり、破棄という概念自体が既に時代遅れといわざるを得ません。

冤罪の懸念については、現在、たとえメールに添付された児童ポルノを取得するソフトウエアやルートキットを起動してしまいそうになっても、最新のOSでは、セキュリティ証明書が付いて無い出所不明なソフトウエアが起動されようとしたときは、アクセス制御が行われ、事前の警告が表示されます。アンチウイルスソフトを導入していれば、それが即知のものであればパターンを照合して判定し、未知のものはヒューリスティック検知機能を使って特有の挙動から危険性を調べてくれます。
また、メールに児童ポルノが添付されたとしても、ほとんどのメールソフトは特殊な形式かつ専用の領域に保存されるため、故意に取得したものではないことが判明します。以上の理由から、現在では、技術的な環境が整ってきており、冤罪がおきにくいと考えられます。被写体とされた子ども達のことを思えば一日も早く単純所持の処罰化を含めた法改正が必要なのです。

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