森美術館における「会田誠展」の性暴力展示に抗議を
現在、森美術館において「会田誠展」が開催されていますが、ここには、四肢切断された全裸の少女が首輪をされて微笑んでいる「犬」という題名の連作をはじめとして、性暴力性と性差別性に満ちた作品が多数、展示されています。
(作品の一部は、森美術館の公式ブログにて紹介されていましたが、2013年01月28日19時~22時の間に、明確な謝罪も説明もなしにこっそり削除されました)
これらの作品は、残虐な児童ポルノであるだけでなく、きわめて下劣な性差別であるとともに障がい者差別でもあります。このようなものが、同人誌にこっそり掲載されているのではなく、森美術館という公共的な美術館で堂々と展示され、しかも、各界から絶賛されているというのは、異常としか言いようがありません。すでにNHKの「日曜美術館」で肯定的に取り上げられ、最新の『美術手帖』(2013年1月号)では特集さえ組まれています。
私たちは、森美術館に対して1月25日付で抗議文を送付するとともに、多くの団体・個人と協力してこの問題を広く世論に訴えていきたいと考えています。またこの問題を国際的にも訴えていきたいと考えていますので、みなさんのご協力を求めたいと思います。
その後の経過
私たちが1月25日に抗議文を出して以降の経過について簡単に報告します。森美術館からはその後、2月5日付で館長名の回答が出されました。また、同日、森美術館問題をめぐる緊急シンポジウム「森美術館問題を考える討論集会――問われる表現の自由と責任」が平和力フォーラムなどの共催で東京しごとセンターで開催され、50名以上が参加し、私たちの会のメンバー2名も報告をしました。
2月5日の森美術館の回答に対して、私たちの会は、2月15日付で森美術館の回答に対する意見書を森美術館に送付しました。この意見書では2月中に話し合いの場を持つことを要請しましたが、その後、森美術館から3月上旬に話し合いの場を持つことを認める回答を得ることができました。この話し合いの結果についてはまた後日、報告させていただきます。
森美術館に対しては、私たちの会による抗議以外にも、他の団体による抗議や、多くの個人抗議文も出されています。これらの抗議文については、了解を得た上で、随時、本サイトで紹介する予定です。(→3月5日に、「公人による性差別をなくす会」の抗議文をアップしました)
また、この問題は各マスコミでも取り上げられていますが、比較的良心的なメディアは両論併記の形で報道していますが(たとえは『東京新聞』1月13日付)、基本的に森美術館と会田誠を擁護し賞賛する立場からの報道も多く見られます(典型的には3月4日付『AERA』の「現代の肖像」)。
さらにその後の経過
『週刊金曜日』3月1日付において森美術館の会田誠展をめぐって2つのまったく異なる立場からの記事が掲載されました。宮本有紀さん執筆による最初の記事は、私たちの会や森美術館に対する取材、およびこの展示に批判的な人々への取材に基づいて、この展示の問題性と森美術館の姿勢とを厳しく問うものになっています。
3月12日に、私たちの会のメンバーと森美術館の館長および他数名とのあいだで1時間にわたり話し合いが行なわれました。この話し合いの場において森美術館側は基本的に彼らの公式声明の枠内での「官僚的答弁」に終始しました。また彼らが性暴力やポルノ被害の実態について何も知らず、またほとんど関心を持っていないことも明らかになりました。彼らは、会田誠の性暴力的絵画を肯定的かつ大々的に公共的空間で展示しておきながら、あたかもそうした絵画に対して中立的に振る舞っているかのように主張し、公共的な美術館としての社会的責任を不問に付し、議論が起こったのだからよい、という無責任な態度に終始しました。この話し合いの内容についてより詳しくは、このサイトでか、あるいは私たちが5月頃に発行することにしている『報告集』において報告する予定です。
この森美術館問題については海外のメディアでも取り上げられており、Asia-Pacific Journal という雑誌では、まず2月11日に森美術館側を擁護する David McNeill 氏の記事が掲載されましたが、それに対する反論も兼ねて、基本的に森美術館側に批判的な Matthew Penney 氏の記事が3月11日付で掲載されています(“Human Dogs”, Aida Makoto, and the Mori Art Museum Controversy)。