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【売春防止法改正の動き】
最近、売春防止法の改正を巡っての動きが活発になってきました。
売春防止法は女性の権利擁護に携わっている弁護士であってもその内容を詳しく知らない人がいるというわずか40条の極めてマイナーな法律です。存在としてはマイナーな法律ですが、性を扱っているという点で非常に重要な法律の一つです。
1956(昭和31)年に成立し、成立当時からザル法と揶揄され、法律の根幹をなす理念部分がまったく改正されないままに約60年が経過してしまいました。現在では、法律の存在自体が女性の尊厳や権利を甚だしく侵害する旧弊な法律になってしまっています。
壮大な社会的装置である買売春問題を扱う法律にもかかわらず、約60年間も放置されてきたために今となってはどこから手をつけていいのか分からないくらいに課題は山積しています。山積している課題のうち代表的なものをいくつか上げます。
課題その1 女男の社会的経済的その他もろもろの不平等を前提とするから成立する買売春ですが、女男の平等推進の理念がまったくない法律です。
課題その2 売春をしている女性が買売春を助長する行為をしたとして処罰や更生、保護の対象になっており、買う側の客の姿がまったく見えません。従って、女性の性を買う客は、どんなに頻繁に女性の性を買っても何のおとがめなしでのうのうとしています。悪いのは女性と業者という論理で構成されている法律です。
課題その3 売春を助長する行為で有罪判決を受けた女性が執行猶予になった場合は、その女性は将来売春を助長する行為を侵す恐れがあるとして“補導処分”に附し婦人補導院(八王子少年鑑別所に併設)に収容することができます。これは明らかに保安処分の一種で憲法違反です。
課題その4 買売春は性を売買する壮大な社会的装置となっているにもかかわらず、国家や地方自治体の行政責務がまったく問われていません。
課題その5 法律用語として現在では不適切な用語(収容、指導、要保護女子、婦人等)が使われています。女性たちが婦人保護施設を利用した場合、彼女たちは“収容”されているのです。
売春防止法を主たる根拠法として設置されている婦人保護施設などで構成される全国婦人保護施設等連絡協議会(全婦連)では、ながらくこの法律の改正を求めることに消極的でした。一部の有意の現場の人々が改正を訴えているに過ぎない状況が続いていました。
昨年の全婦連の全国大会において、これら一部の人々の動きがようやく実り、売春防止法改正を求める総意が決議されるに至りました。
その後、法改正を求める総意を実現すべく全婦連として、上川陽子法務大臣、塩崎恭久厚生労働大臣、有村治子内閣府特命担当大臣あてに、「売春防止法に係る要望書」を提出しました。
2015年1月24日(土)に全婦連の内部組織の一つである東京都会福祉協議会婦人保護部会が主催するシンポジュームが都内で開催されました。
シンポのタイトルは「要保護女子の収容・保護・更生から女性の人権へ~今こそ変えよう売春防止法~」でした。法律で使われている差別的な用語をあえてタイトルにすることで改正の必要性を訴えています。シンポジストは、お茶ノ水女子大名誉教授の戒能民江さん、弁護士の角田由紀子さん、千葉県サポートセンター所長で全婦連副会長の浅野由美子さんが登壇しました。
戒能さんからは2012年に厚生労働省に設置された「婦人保護事業の課題に関するあり方検討会」座長としての論議を踏まえて、現在の婦人保護事業全体の状況の解説とともに今後のあるべき姿として、行政による措置・指導・援助から権利体系として法を整えることによって「あらゆる女性たちの人権保障」を求める提言がありました。
角田さんからは、2013年に日弁連として取りまとめた「刑法と売春防止法の一部削除を求める意見書」を踏まえながら、売春防止法と裏腹の関係にある風営法の性風俗関連特殊営業の問題点を指摘しました。その上で、女性の人権擁護を明確に定めることを提案されました。
浅野さんからは、売防法による婦人相談所機能とDV防止法による配偶者暴力相談支援センターの機能を併せ持つ現場の状況を伝え、押し寄せる相談に対応しきれなくなくなっている現状について訴えがありました。
恐らく、全婦連としては今後順次関係各大臣に直接面談して改正の必要性について要望する動きをさらに活発化させることになると思われます。
売春防止法改正をめぐって、目が離せない動きが活発化していることをお伝えしましたが、今後順次この動きについてはメルマガでお伝えしていきます。
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