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「性的搾取を禁止する法律が欲しい」私たちの決意
PAPSは「AV 違約金」「AV出演させられそう」という検索キーワードで検索された方からの相談を受けることがあります。話を伺うと、そのほとんどが、「親に言うぞ」「学校に言うぞ」「違約金を支払え」と脅かされ、AV出演契約書に同意を求められます。20歳前後で法律に詳しくない方にとっては、そこで恐怖心を感じ、不当な要求に逆らえずに「契約書にサインしてしまった」「お金をもらってしまった」という事実に縛られて自分を責めたり、自分を被害者だと感じられずに心身にさまざまなダメージを受けてもどこにも相談できずに過激な撮影に応じてしまわれます。
なお、このメルマガでいうAV撮影とは、対価を受け、または受ける約束で、性行為や性行類似行為を伴う撮影を行うことを指します
AV撮影現場で明らかに性暴力を受け、不当な搾取に曝されているのに、現在はこの状況を救済する法的な枠組みがありません。どのような状況が展開しているのか、まずは私たちが把握している事実をお伝えしす。
例えば、ある大手のAV制作会社では、署名押印する様子をビデオカメラで録画し、被害を訴えないように仕向けます。たとえ警察に訴えても、脅迫罪や性犯罪の構成要件が高いために、民事の問題として扱われてしまい、芸能事務所や制作会社の行為は刑事的な取締りの対象にならないのが現状です。なぜならば、証拠となる録音が無いこと、「親や学校に言うぞ」というのは脅迫罪でいう害悪告知になりにくいこと、強姦罪、強制わいせつ罪では、「相手方の抗拒を著しく困難にする」という「強度の抵抗要件」が必要であり、必至になって抵抗したことを証明しなければならないためです。
例えば、大手のAV制作会社の撮影現場では、1回の撮影で場合によっては4~5人もの男性との“絡み”(性行為)が要求され、たとえ「子宮が痛い」と訴えても撮影は継続され、これらの映像は、自ら望んで出演したごく普通のAVとして、大々的に販売されている現状があります。いま精一杯頑張れば、いつか報われて仕事内容だって自由に選べるようになれると信じ込まされますが、実際はそうはなりません。これを何回も繰り返されることで、あたかも外形的に自分が同意したかのように装われ、もう後戻りできない状況に追い込まれます。大抵の女性たちは、同級生や家族に知られることを極度に恐れています。それを逆手に利用して、親にばらすぞなどと脅してさらに孤立させることに成功し、完全に抜け出せない状況を作り出します。現に“親バレ”、“身バレ”などという言葉が飛び交っています。
「自分で仕事を選ぶことができる」「脱がない仕事だってある」「プライベート重視」「自分の夢のために」などと言葉巧みに言いくるめられてAVの出演に同意された方であっても、実際に撮影に臨んでみて過激なポーズや行為を要求された場合に、それは出来ないと断ることができるはずです。しかし、実際には、契約があるじゃないかとか多額な違約金が要求されるなどと脅しを受けます。“契約”をして撮影に臨めばもう選択の自由がほとんど無いと本人に思わせるのが実情です。
人の弱みに付け込んで意のままに労働させることおよび各種労働法規の規定を超える不当な労働を搾取労働といいます。それが性的な表現を用いたものであれば「性的搾取」になります。
特に、AV出演の勧誘は法律の知識がない20歳前後の女性がターゲットになっています。出演契約(業務請負契約)は絶対だと信じ込まされ、AV制作会社が大手であればあるほど、拒否したい行為を要求されても、そのあと何をされるか怖くて、訴えにくい現状があります。本来であれば、アダルトビデオ出演の契約そのものは「公序良俗」に反しており、民法90条(公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする)により無効になりますが、例えば、以下のような行為は、実際にAVの現場で行われていますが、取締りの対象になっていません。
【出演に関して】
1. 勧誘してAVに出演させる行為
2. 困惑させ、あるいは騙してAVに出演させる行為
3. 当人の意思に反してAVに出演させる行為
4. 前借金をさせAVに出演させる行為
5. AV撮影をやめたい意思表示をしたときに違約金などを請求する行為
6. 妊産婦をAVに出演させる行為
7. 軽度な発達障がい・軽度な知的障がいを抱える方をAVに出演させる行為
8. 医師の処方箋等で向精神薬を服用されている方をAVに出演させる行為
【AV撮影について】
9. 事前に取り決めのない行為を要求する行為
10. 避妊具無しの性行為、膣内で射精する行為、顔の一部または全部に精液をかける行為
11. 公然わいせつ罪に問われる行為
12. AV撮影中に撮影をやめたい意思表示をしたにも関わらず撮影を継続させる行為
【虐待的なAV撮影について】
13. 身体的暴力・精神的苦痛を与える行為
14. 窒息・うっ血・炎症・(内出血を含む)出血をさせる行為
15. (昆虫・魚類・両生類・爬虫類・哺乳類等の)動物や植物を性器・肛門・口腔等に挿入したり、舐めさせたり体にかける行為
16. 性器・肛門・口腔・乳首を酷使させる行為
17. 糞尿や体液(自身のものも含む)を性器・肛門・口腔等に挿入したり舐めさせたり体にかける行為
18. 性器・肛門・口腔に対し痛みや出血を伴う器具や衛生的ではない指や他者の腕等身体の一部を挿入する行為
19. 食品衛生法に準じないもの(墨汁や花火等いわゆる性具とは到底認められないもの)を性器・肛門・口腔等に挿入したり舐めさせたり体にかける行為
20. 食品衛生法に準じるものであるが危険性が伴うもの(アルコール類、熱湯・冷水、薬品類)を、性器・肛門・口腔等に挿入したり舐めさせたり体にかける行為
21. 膣鏡や内視鏡等を用いて膣腔や子宮を撮影する行為
22. 一時的な苦痛を取り除くために(抗不安薬を含む)向精神薬、(局部麻酔薬を含む)麻酔薬を用いてこれらの一部または全部に準じる行為
ある女性は、月額10万円以上の高額なマンションに住まわせられ、ダンスのレッスンや、美容整形手術をするように言われ、これらの費用を前借金として負わせられて、知らない間に決まっていた複数のAVに出演することで返済していくように言われました。これは労働の不当な搾取構造そのものであり、戦前の芸娼妓契約(身売り)の現代版といっても過言ではありません。あまりにも残酷です。
もし、この女性が支援団体に相談して以降の出演をしなくて済んだとしても、生涯にわたって背負うことを要求され苦しめるものがあります。例えば、その後の示談によって裁判に訴えないことを約束させられたり、機密条項を設けることによって第三者へ話すことを禁じられたりします。また、被害女性は、勇気を出して被害を社会に訴え出れば、メディアの注目を浴びてしまい、多くの人に見られてしまい、更に追い詰められてしまうことを恐れます。二次被害です。違約金は支払わなくて済んだとしても、女性に不利な示談や、泣き寝入りを余儀なくされたり、示談などで販売店からビデオが回収されたとしても、インターネットで頒布されたものの回収は現実的に厳しいことから、ずっと怯えて暮さなければなりません。しかし、プロダクションやAV制作会社はそのまま温存され、同じような被害が繰り返し行われている現状があります。
PAPSでは、複数の相談者の方と接してきました。今足りないのは、AVに巻き込まれた多くの女性たちが置かれている状況を「性的搾取」「性的暴行」のひとつとして定義し、規制したり禁止する法律です。性的搾取をするプロダクションやAV制作会社の責任を明確化し取締りの対象とし、頒布されてしまったビデオを回収できる法的枠組みを作ることを社会や政府に訴えていきたいと考えております。
2014/07/07:一部修正