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●●ポルノ被害と女性・子どもの人権プロジェクト メールマガジン
vol.025 2014年04月03日 発行
【ポルノ被害と性暴力を考える会】
http://paps-jp.org
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3月16日に行われた森美術館問題のシンポジウム開催模様
第5回ポルノ被害と女性・子どもの人権シンポジウム/性暴力を許さな
い女の会公開学習会「館長、その“芸術”は性暴力です!」
*3月16日(日)、大阪ドーンセンターにて開催。大阪で森美術館問題のシンポジ
ウムを開催して果たして参加者がいるか危ぶまれていたが、会場は70人定員の
ところ50名入場。1時半に始まって、閉会予定の4時を超えて4時半まで質疑を
交えて3時間たっぷりの討論がなされた。3人のシンポジストがそれぞれ30分
づつ前の話の内容について視点を変えて引き継ぐ形で語り継いでいった。
☆シンポジストの発言要約
■中里見博(徳島大学教員)
「ポルノの性暴力性はなぜ見えないのか」
ポルノは男性による女性の支配行為の一形態、性暴力の一類型だ。
ポルノに関わる女性の被害を分析した。その上で、性暴力としてのポルノを把握す
る上で重要な視点は二つある。一つは、性暴力の連続体(相互に関連し影響し合う4
つの要素:性産業、学校・職場、ストリート、家庭)、二つ目は、性売買としてのポ
ルノ。性暴力の連続体としては4つの要素の相互関連性が問題になるが、シンポでは
性産業と家庭とがどのように関連しあっているのかを具体例をあげて解説。二つ目
の視点の性売買としてのポルノでは、まず、性売買の定義について、「ある人々が
他人の身体の性的使用権を売買すること」とし、ポルノが製作される前提として、
表現以前に性売買が行われていることを指摘した。その上で、会田誠作品展の性暴
力性を覆いかくす要素として、作品が絵であったこと、作者が現代美術の旗手で作
品は芸術作品とみなされたこと、森美術館は非常に名声の高い美術館であったこと
等をあげた。この全体状況の中で、ポルノの性暴力性がなぜ見えないかについて、
まずすべての性暴力に共通のこととして、ポルノがジェンダー規範に則っているこ
と等の背景を上げた後、ポルノ特有の問題として、ポルノが「表現」であることに
ちなみ、表現は自由であるべきという延長線上に性表現もまた自由、解放、反権力
等とされることを指摘した。
■宮本節子(フリー・ソーシャルワーカー)
「表現する力のない者には沈黙しかないのか」
森美術館の会田誠展への抗議の顛末の経過を解説し、抗議行動への批判として、
表現の自由を擁護する論点を紹介した。そのうえで、表現の自由論は、表現する力
があることを前提として機能するが、そもそも表現する力のない者にとっては表現
の自由論だけでは自分の尊厳は護れない。「多弁な自己主張VS沈黙」という対抗軸
を立てて考えた。歴史的に表現する力を奪われたり、沈黙を強いられた者・集団等
々は様々に存在してきたし、存在している。人としての尊厳侵害を受けてきた人々
の沈黙と現在として、日本人の従軍“慰安婦”の完全沈黙と言っていい沈黙の例を
上げた。沈黙を強いたのは時の権力者・支配者のみでとはいえない。社会的に沈黙
を強制されてきた。表現の自由論では機能しない差別の世界だ。究極の沈黙は、死
と記憶の消去だ。従って、当事者の自己表現の力の獲得と獲得への支援が必要だ。
被害者が対抗表現を獲得するためには癒しのプロセス無しには達成できない。また、
これらの人々の対抗表現は当事者でなくてもできるし、当事者でない者の社会的責
任として当事者を黙らせるような、より沈黙を強いるような行為に加担するな、と
言いたい。
■岡野八代(同志社大学教員)
「会田誠展は、なにに危害を与えているのか? ウォルドロン、マッキノンから学ぶこと」
まず、国際自由権規約の第20条二項「憎悪の唱導の法律による禁止」の原則を
前提として同条約第19条に規定される「表現の自由」の権利行使には義務と責任を
伴うことを押さえた上で、ウォルドロンの最新の論考(「The Harm in Hate Speech」)
から人々の「尊厳が守られる社会」とはどのような社会かの例を紹介した。すなわ
ち、ひとが侮辱や屈辱の恐れなく道を歩けるようになることだ。そして、会田誠の
絵画やポルノに代表される事象には“被害者がいない”という反論がなされるが、
この考えには見落としているものがある。集団に対する毀損だ。公的な空間に会田
誠の絵画を「飾る」、社会に氾濫させることの含意について、自由で民主的な法治
国家の前提である包括性への攻撃等、具体的な例をあげて解説した。その集団全体
が貶められることを社会が許しているというメッセージになる。その集団、即ち傷
つけられるのは脆弱な集団で、脆弱な集団の中で最大の集団は女性だ。この意味で
ある個人への攻撃より深刻だ。そして、ある集団の人格を貶め、暴力を喚起させ、
侮蔑や憎悪をあらわにするモノにあふれた状態は、「諸個人の尊厳を守る」ために
こそ存在する社会や法を直接攻撃を加えている。
☆参加者や会場の様子
・参加者:50名 内アンケート回答者:26名(回収率52%)
・男性の参加者7,8人で、比較的男性の参加者が多いシンポだった
・年齢層は50代以上を中心に20代も多いように観察された
・質問や意見を寄せた参加者:9名
・フロアからの発言:数名
☆シンポジストの中里見博さんの感想
・本当にいい会になりました。私の話は十年一日の感が否めませんでしたが、まず
宮本さんの話はすばらしかったですね。とくに、「多弁な自己主張vs.沈黙」という
対抗軸で、差別を受けてきたマイノリティの様々な沈黙の中に、森美問題を位置づ
けるお話は、非常に説得的でした。
また、岡野さんのお話もすばらしく、最新の議論を踏まえながら、ポルノ批判論に
新境地を開いていただく、きわめて貴重なお話でした。本当にありがとうございま
した。
すべての質問・発言は、真摯なものであり、その点でも、大いにエンパワーされました。
■ポルノ被害と性暴力を考える会編の出版物
『森美術館問題と性暴力表現』(不磨書房 2013.8)1890円+送料
『証言 現代の性暴力とポルノ被害 ~研究と福祉の現場から~』
東京都社会福祉協議会 2010.11)1905円+送料
パンフレット「今は、まだ名前のない性被害があります」カンパ200円以上+送料
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