第4回シンポ「国際的に広がる性売買被害~オーストラリア・韓国・日本の現状から」
2012年のシンポジウムは、外国からのゲストをお呼びして、以下の国際シンポジウムが開催されました。
■日時:2012年9月30日、午後1時~5時半
■場所:大妻女子大学
■パネルディスカッション
キャロライン・ノーマ(オーストラリア、RMIT大学講師)
キム・コ・ヨンジュン(韓国、梨花女子大学研究教授)
大森佐和(日本、ICU准教授)
キャロライン・ノーマさんは、オーストラリアのロイヤル・メルボルン工科大学(RMIT)の「国際関係・社会科学・プランニング」学部の講師で、Coalition Against Trafficking in Women Australia(CATWA:女性の人身売買に反対する同盟オーストラリア)の中心メンバーです。日本にも豊富な留学経験があり、日本における売買春問題を論じた著作で博士号を取得しています。今年の1月に来日し、PAPSおよびAPPのメンバーと交流しました。
キム・コ・ヨンジュさんは、韓国の梨花女子大学の文化・女性研究科教授で、韓国の10代の少女による「援助交際」に関するフィールドワークを長年行なっており、このテーマで著作も2冊出版しています。
大森佐和さんは、日本の国際基督教大学(ICU)の教養学部准教授で公共政策専攻。「ECPAT/ストップ子ども買春の会」の中心メンバーであり、私たちの会のメンバーでもあります。
国外からのパネリストをお迎えしての国際シンポジウムは初めての試みでしたが、パネリストの方の素晴らしいご報告と、その後の熱心なディスカッションのおかげで、内容的には素晴らしい成功を収めることができました。
ただ残念なことに、当日、台風が首都圏を直撃することとなり、質疑応答の時間を削って、予定より1時間以上早く切り上げなければならない事態になりました。また、台風の影響からか、参加者も例年よりも少なくなりました。しかし、それでも天候の悪い中、120名弱の方々に参加していただき、シンポジウムを無事成功させることができました。参加者のみなさん、ボランティアのみなさん、まことにありがとうございました。
以下、当日の参加者の方からの感想をいくつか抜粋させていただき、当日の雰囲気をお伝えします。
■キャロライン・ノーマさんのお話への感想
・「日本とオーストラリアの人身売買での歴史的な背景を知ることができました」
・「オーストラリアと日本の性産業の関係性がとても分かりやすく、深く理解することができました」
・「不勉強であったこともありますが、日本とオーストラリアの関係が意外に感じられました」
・「売春を合法化するということだけでは、資本化された商業主義的な性産業のなかで、女性や子どもの人権、売春者の人権を守ることはできないということがよく分かって面白かったです。また、売買春とポルノグラフィの問題が地続きであることを改めて考えさせられました」
・「オーストラリアという国のイメージはおおらかでステキな“観光”というものでした。どの国にも暗いものはあるのだとよくわかりました。また、日本のポルノ文化の影響の大きさにおどろき、また悲しくなりました」
・「こういった所で日本とオーストラリアがつながってしまっているなんて知らなかった。また、『文化』として日本のポルノの内容が美化され、ポピュラーになっているということは、ショックだった」
■キム・コ・ヨンジュさんのお話への感想
・「同じアジアで性売買防止法という法律の制定が完備していることに刺激を受け、勇気づけられます」
・「10代の買春問題について、日本と共通する部分も多く、興味深かった」
・「韓国の問題には関心があるので家父長的社会における女子の地位向上と性問題の相関は、日本でも重要な観点だと思う」
・「とてもわかりやすく、よく研究されていて実情には驚くことばかりだった」
・「やはり日本のさまざまな影響や余波をうけている事(援助交際・漫画etc)が話されていたが、グローバルな視点で、せめて意識ある女性が手をつないで売買春防止ととりくむ必要性を感じた」
・「自発的性売買は結局自己責任となっていて、本当に現実はひどいと思ったし、男性優位社会への強い疑問を感じた」
・「フィールドワークの発表ということで、実際に経験した方たちのリアルな意見を聴けたのが貴重でした」
■大森佐和さんのお話への感想
・「子どもポルノは、はっきり性虐待といって下さってありがたかったです」
・「日本のポルノ問題について整理ができ、改めて早くポルノ規制を強化し、ポルノ/性の搾取を失くしていかなければと思います」
・「何ゆえ子どもポルノ規制が進まないのか、その問題の核が見えたような気がしました」
・「児童ポルノについて、国を越えてという部分、考えたこともなかったです。勉強になりました」
また、シンポジウム全体についても以下のような感想をいただいています。
・「3人の話しがわかりやすくなり、今後の方向性がもててよかった」
・「オーストラリア・韓国・日本のそれぞれの今の問題を聞くことで、今までは、日本の実の問題に焦点をあてがちだったし、日本のことしか知らなかったので、実は性的問題は国を問わずに存在していることを認識できました」
・「各国の被害の状況、各国の関わり合いについて詳しく知りえることができ、被害は一国だけでは解決できないものであると理解することができました」
・「キャロライン・ノーマ氏のお話も、キム・コ・ヨンジュ氏のお話も他国の実情に触れる有意義な内容でした。ただ時間がもう少しあれば・・・台風がうらめしい」
・「毎回このようなシンポジウムの企画・実施に感謝しています。グローバル化している世界においてアンダーグラウンド化して増殖する性産業、人身売買、子どもポルノの現状を知ることができました」
以上のようなご意見の他にも、いくつか批判的な意見や改善の提案などもいただいております。これからの活動の参考にさせていただきます。また当日は、私たちからの要請に応えて、多くのカンパも寄せられました。参加者のみなさん、まことにありがとうございました。
今回のシンポジウムの報告書については、来年の春ごろには発行する予定にしています。シンポ当日の資料集には載せられなかったさまざまな資料(韓国の種々の法律や日本における児童ポルノ法の各党の改正案など)を掲載する予定です。