「ポルノを見て楽しむのは個人の趣味や嗜好なのだから、別に問題ないんじゃないの」、「道徳的には問題あるかもしれないけど、そんな道徳はすでに古臭いし、別に被害者がいるわけではないし……」、このようによく言われます。しかし、本当にそうでしょうか?

ポルノ被害とは

 私たちの周りには、ポルノ的なものがあふれています。電車の中の吊り広告、街の性風俗のちらしや立て看板、電車の中で読まれるスポーツ新聞の性風俗記事、インターネット上でのポルノ広告や性風俗業者からのメール、コンビニに平積みにされたポルノ雑誌、等々。

 大人だけでなく、子どもたちもこうした環境にさらされています。これらのポルノの中には、きわどい水着写真や漫画などを通じて少女を性的対象にしたものも数多く含まれています。

 成人女性を被写体としたものであっても、出演している女性に対し明らかに虐待と思われる行為がなされているものや、痴漢やレイプなどの性犯罪を娯楽として描くものが無数に存在しています。

 新聞やインターネットなどのニュースを見ても、ポルノに関連する事件がしばしば報道されています。スカートの中の盗撮、いまだに後を絶たない児童ポルノの制作と販売、ポルノの影響が顕著に見られる性犯罪、等々。最近では、「リベンジポルノ」という言葉がしばしば目にするようになっています。別れた恋人や元夫などが腹いせに、元恋人の性的写真や動画を勝手にネットにアップしたり、職場や家族にばらまくような行為を言います。日本でもストーカー行為の一環としてこの行為を行なった男性は、最終的にその元恋人を殺害するに至っています。

 報道されていなくても、女性や子どもが職場、家庭、学校その他さまざまな場で、ポルノを無理やり見せられたり、ポルノで描かれているような行為を強要されたりすることもあります。

 このように、ポルノの制作・流通・販売・消費・社会的存在などの場面を通じて発生している性被害を「ポルノ被害」と呼んでいます。この種の性被害、性暴力は、一般に思われているよりもずっと広く深く存在しています。

ポルノ被害の5つの種類

 ポルノは、その制作から始まって、流通、消費、社会的流布を通じてさまざまな性被害を引き起こしています。時には、その存在そのものが権利を侵害しつづけることさえあります。

 私たちは、その全体を、「制作被害」「流通被害」「消費被害」「社会的被害」「存在被害」という5つのタイプに分類してみました。

 「制作被害」とは、たとえば、商業ポルノの制作過程で契約や同意に反する行為を強要される、暴力的で危険な撮影をされる、裸体や性行為を盗撮される、性暴力を受けその姿を撮影される(強撮)というものです。

 「流通被害」とは、たとえば、上述の制作被害物が流通される、カップルで撮った性的写真・映像が意に反してネットなどで流布される、いやがらせや報復などのために性的な写真や合成写真を頒布される、などです。

 「消費被害」とは、たとえば、家庭や職場などで意に反してポルノを見せられたり、ポルノ的な行為を強要される、ポルノの影響を受けた者から痴漢やレイプなどの性暴力を受ける、などがあります。

 「社会的被害」とは、たとえば、電車などで不意にポルノ的なものを目にして苦痛を感じる(環境ポルノ被害)、ポルノの蔓延を通じて女性の尊厳を傷つけ、女性を性的消費物とする見方を維持・強化し、女性の社会的地位を低下させる、などです。

 「存在被害」とは、たとえば、制作被害物が他人に所持されつづけ、個人観賞用に使用されつづける、自分の裸体が映った写真や映像が脅迫やいやがらせに利用される、などの被害です。

 以下、それぞれの被害についてより詳しく見ていきましょう。

1、ポルノの制作被害

2、ポルノの流通被害

3、ポルノの消費被害

4、ポルノの社会的被害

5、ポルノの存在被害

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