メルマガ39号 AV違約金訴訟で原告(プロダクション)敗訴 判決の意義(その1)


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●●ポルノ被害と女性・子どもの人権プロジェクト メールマガジン
                 vol.039 2015年12月14日 発行

【ポルノ被害と性暴力を考える会】
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 今年9月9日、AV出演を断った女性に芸能プロダクションが2460万円の違約金支払いを求めた訴訟で、プロダクションが敗訴する判決が下された。期限までにプロダクションが控訴しなかったので、女性の勝訴が確定した。
 プロダクションが、女性を騙してAVを撮影した行為は「集団強かん」に等しく、本来犯罪行為として刑事責任と、民事上の損害賠償責任を問われてしかるべきだ。
 ところがあろうことか、プロダクションは、自分たちで勝手に決めた「残り9本のAV」に女性が出演しないと知ると、本来得られたはずの利益や宣伝にかかった経費などと称して2460万円の違約金を要求し、裁判を起こした。違約金の支払いは、女性がよく内容を理解しないまま署名捺印させられた契約書に規定されていた。
 プロダクションは、この底知れぬあくどい訴訟を起こしはしたものの、ただ単に請求が棄却されただけの結果には終わらなかった。逆に自分たちの首を絞める結論を引き出してしまったということができる。判決は、次のように判示したからである。

「アダルトビデオへの出演は(中略)性行為等をすることを内容とするものであるから、出演者〔の〕意に反してこれに従事させることが許されない性質のものといえる」

 これは一見すると当然のことを言っているにすぎないように思われるが、女性の訴訟代理人の1人であった伊藤和子弁護士が指摘しているように、「改めて判決〔が〕このように言い切った事例はやはり画期的」である。なぜならそれは、AV出演に関しては「意に反する以上、女性側から即時〔契約の〕解除が可能」となる「やむを得ない事由」があるということを意味するからだ。

 よって、プロダクションは「これからはもう、契約書をたてに、本人の意に反して、AV出演を強制することは許されない」。逆に、「悩んでいる女性たち」は、この判決をこそ「たてに」して、「嫌ならいつでも、できるだけ早く、契約を解除」することができる。「AVはいやです。やりたくありません」とLINEに書いて伝えるか、ファックスや郵送で送りつければよい、ということだ。そうしさえすれば、少なくとも法的には「翌日から撮影現場に行く必要はない」。もっとも、相手が実力行使に出る可能性もあるので、理解ある相談機関や弁護士と繋がる必要はある(警察は今のところ「理解ある」ことを期待できない)。

 プロダクションは、法外な額の「違約金」なるものを武器にして、これまでも、そして現在も、数え切れない女性にAV出演を強要し、若い女性たちの人生を台無しにし、時には命をも奪い、自らは暴利を貪ってきた。その非道な手法の非道性を──最初からか途中からかはわからないが──見失い、それを法廷の場に持ち出したことによって、かれらはそれに法律上の正当性などひとかけらもないことを明らかにしてしまった。

 この法律上の勝利は、諦めることなくプロダクションの魔の手から逃れようとした被害女性、彼女を身を挺してサポートしたPAPSメンバー、そして伊藤弁護士を始め6人の訴訟代理人を勤めた女性弁護士によって勝ち取られた。

 これからは、この判決の主旨を私たちは大いに宣伝し、広め、活用することが必要になる。PAPSのウェブサイトに判決主旨を大々的に掲げることもいいだろう。また、警察庁・警視庁に周知し、個々の現場の警察官に教育・研修させることも必要だろう。この事例で実際に生じたように、警察に救いを求めたら「あと2本出演したどうか」などという対応をされることを絶対に繰り返してはならない。

 この判決は、しかしポルノの出演被害に遭った女性を防護する「最低ライン」を確保したにすぎないこともまた事実である。今後に残された課題としては、意に反して撮影されたAVの販売差止め、回収命令を容易にすること、被害者からの損害賠償請求をでき易くすることなどがある。

PAPSに寄せられた約100件もの被害相談は、まずは相談体制の充実・確立こそが必要であるものの、その次の大いなる目標が、被害女性を支援する法の制定にあることを示しているように思われる。
 次回のメルマガでは、今回の裁判は、性被害にあった女性たちにとっては、どのような意義があるかについて触れていきたい。

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